ピースおおさか
2007年5月26日訪問
大阪城公園の東南に、財団法人大阪国際平和センター「ピースおおさか」がある。
朝鮮侵略をした秀吉のシンボル大阪城、そして明治以降は陸軍の大軍需工場群があった城東の地近くに、大阪府と大阪市によって1991年に設立された。
大阪市は他の大都市と同じく空襲で多大な被害を被り、堺市など府下の各地でも多くの犠牲が出ている。
ピースおおさかでは、その被害の悲惨さを語るとともに、大日本帝国がアジア各地におよぼした犠牲についても語る。
入ってすぐの「展示室A」は、「大阪空襲と人々の生活」と題された展示。
空襲に蹂躙された大阪市街の様子や空襲体験記などが、映像や実物大模型を使って表現される。
地元の大阪の空襲をとりあげ、実物模型や映像、体験者による絵画などを駆使して、見学者が戦争の被害を身近に、実感的に学べるような工夫がされている。
平和学習の導入として、理解しやすい被害の面から入るのは理にかなっているといえる。
空襲の展示に続いて、当時の生活の展示。
生活のすべてが戦争に駆り立てられ、戦争遂行のために利用され、戦争のために犠牲にさせられたようすが、市民の協力で集められたさまざまな実物資料によって語られる。
戦意高揚のポスターや、召集令状、配給切符、出征兵士を送る幟や寄せ書きの日の丸、戦争にちなんだ名前に変えられた粗悪な包装の生活用品、学童疎開の子どもの切ないはがき……。
「防空体制」を整えた当時の民家の再現セットを見ると、こんな無力な対策で自分の身を守れと当時の国民に教えた国家の無責任さを痛感させられる。
「展示室B」のテーマは、「15年戦争」。
はじめに見た悲惨な戦争から学習を一歩進めて、そんな戦争に日本はどうやって突入していったのか、悲惨だったのは日本に住む人々だけだったのかが、多くの写真パネルや詳細な資料で語られる。
中国、「満州」、朝鮮、東南アジアの国々と設定された各コーナーでは、日本の侵略、すなわち加害面が如実に展示されている。
奥に進むと、広島・長崎・沖縄のコーナーに並んで、ホロコーストの展示もある。
「展示室C」は「平和の希求」。
核の危機を時計の文字盤で表現した「運命の日の時計」の針の示す時刻の変化を、大きな写真パネルで展示される戦後の世界の動きと比較しながら見ることができる。
そして、現代の紛争や環境問題についても考えられる。
このフロアーには、戦争体験者が語るビデオを見るコーナーや、各種ビデオ・DVD資料を視聴するブース、図書館のコーナーもあり、平和についての追体験や研究をすることもできる。
ほかに、映画上映や講演もできるホール、企画展が開かれる展示室もある。
大阪駅から30分かからないアクセスの良さ、バランスのとれた展示内容、無料であること、こう見てくると「ピースおおさか」は、子どもたちが平和を学習する場として好適な、平和ミュージアムであるといえる。